銀色うつ時間

思い出すたび何か胸につっかえてるだけ

8月の現状

今日のこと。

七尾旅人の「兵士A」が各所で評判がよいので観たいと思うも、最終回17時半スタートという厳し過ぎる現実に突きつけられる。「兵士A」という名前からも、性質からもかの作品「911FANTISIA」を想起させるし、いずれお目にかかりたい。

代わりにちょうど公開初日だった「君の名は。」を観た。

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まだ会ったことのない君を、探している

新海誠について、割と苦手意識があったのであまり期待していなかったのだけれど、大きく裏切られることになった。

新海誠作品に対して抱く名状し難い感情や身構えてしまうような感覚は、割と多くの人が共有できるところだと思う。肥大化した自意識と自己完結型の展開、それらに辟易としつつもある種の愛しさを湛えるようで、例えるなら村上春樹の影響をもろに受けた高校生の痛々しさ、そういう類の嫌悪、懐かしさであるように思う。今作はそういった「全力っぽさ」を上手に使えているようで、安心して観ることができた。今までの作品と比較すると、物語の骨子が強固なものになっていて、安定した土台があることが大きいようで、その土台があるからこそある種の白々しさを楽しめた、ということになるのだろうか。途中で挟まれるRADWIMPSの歌すら心地よく、新海誠的な思春期の男子が抱く陰湿な演出ではなく、ある種の爽やかさが駆け抜けるわけである。

新海作品の根底には常に「距離」が描かれていて、そのメタファ・舞台装置として空・線が登場する。今作も同様だが過去作品と比較してみると明らかに異質なのは、長編アニメーションとして成立するだけの奥行きを持ったストーリーが存在する点だ。そこから派生していくコメディ・SFに引き込まれ、夢中になっている内に、気がつけば「距離」の袋小路に入ってしまった。今までの作品は最初から「距離」を露骨に描きすぎいてどこか観ながら冷めてしまう自分がいたが、今作はよい意味で感情移入できて、最後は胸が締め付けられる思いだった。よい意味で新海誠らしからぬ普遍性あるストーリー・演出から来る面白さと、新海誠らしい言葉選び・距離感の描写・美しい映像が混じりあって、傑作だったように思う。セルフオマージュが散見しているところもよくて、秒速5センチメートルの、言の葉の庭の。ケモナーなってしまった細田作品と比較しても遜色がない程に面白かったのではと、思う。

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夏の気持ち

この夏、蔵前や南千住で飲んだくれたり、隅田川をぼんやり眺めたり、シン・ゴジラを何度も観たり、サマソニでCreepを聴いたりと、割と楽しく過ごしている、たくさんサウナに行ったし、瞑想や筋トレもしてるし、夏の終わりにまた素晴らしい映画に出会えたし、やっぱ夏はエモくて最高っぽい。

観終わったあと、岐阜に住む祖父母に会いたいと思ったし、帰りに観た東京のビル群は、美しかった。何を書いてもネタバレになりそうだし、早く観た人と話したいし、早くもう一度観たい。