銀色うつ時間

思い出すたび何か胸につっかえてるだけ

ある光

実家の愛犬、ごんたくんが旅立ってしまった。

12月の頭から調子が悪くなり始めて、1/20の未明にあっさり逝ってしまった。心臓病だった。13歳と3ヶ月だった。

12月に調子が悪いという報告を聞いた日、偶然なのかお告げなのか分からないけど、僕はたまたまごんたくんの夢を見ていて、ちょっと嫌な予感がしていたところに本当に知らせがきてびっくりした。会えるのが最後になるかもしれないと思い年始に帰省したのだけれど、痩せてはいたものの思ったより元気そうだったので一安心していた矢先だった。「遺影撮っておかなきゃ」なんて冗談交じりに言いながらカメラを向けていたけど、まさかそれから3週間で本当に死んでしまうなんて正直思っていなくて、今も現実感がなかったりする。年末年始は仕事関連でも色々あったので悩んでいたけれど、帰省しておいて本当によかった。最後に、頭を撫で、ジャーキーをあげて、 一緒に散歩することもできた。

いつも母が仕事から帰ると小屋から出てきて喜ぶのだけど、それが出てこなくなって、2日後のことだったらしい。その日は夜中まで母親についてもらっていて、翌朝様子を見てみると、眠るように死んでいたそうだ。最後まで大好きな母に撫でてもらって、ごんたくんは幸せだったと信じたい。

誰かを噛んで怪我させたことなんで一度もないし、初対面の人でも決して吠えたりしない優しい犬だった。いつも家族に対して愛想よく振る舞って、僕と散歩するときは飛び跳ねて喜んだりしていた。芸は待てとお手と伏せくらいしかできなかったけど、僕はそんなごんたくんが好きだった。

元々は、おばあちゃんの家で飼われていた犬に子どもが産まれてしまったという田舎ではよくある話で、引き取り手が必要になって我が家にやってきた仔犬だった。僕が13歳のときだ。妹が大事そうに抱えていたその雑種の仔犬は、突然別の場所に連れて来られて不安そうな表情をしていたのを、よく憶えている。寒い冬の日の夕方、一緒に歩いた道すがら、ごんたくんが立ち止まって、僕も立ち止まって、遠州のからっ風が吹いた時、空は美しい赤で、ああ、僕らは心が通じていると感じた(犬を飼う人のいくらかは分かってくれると思う)こと、多感な時期に色々悩んで、ナンバーガールだとかフィッシュマンズなんかを聞きながら何も言わない少年の側にいつまでもいてくれたこと、上京してからあまり帰省したかったけど、ごんたくんは僕のことをちゃんと覚えていて、帰省する度に喜んでくれたこと。そんな思い出の断片が、僕の身体の中で跳ねっ返る。

1/19は妹の20歳の誕生日で、もしかしたらごんたくんは妹の成人を見届けるまで頑張ってくれたのかもしれない。

夜になるとごんたくんを思い出して、泣いてしまう。こうして文章にすると、僕は自分でもびっくりするくらいごんたくんが好きだったということ、ごんたくんと過ごした日々がいかに素晴らしいものだったかということに、改めて気付かされる。

ごんたくん、大好きだよ。今までありがとう。

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